役 割

家庭から出る台所・洗濯・風呂・水洗トイレ等の生活排水を、それぞれの家で処理する施設です。
都市部に整備されている下水道とほぼ同じ処理機能を有しており、現在、都市周辺部や農漁村の地域で普及しています。
従来、し尿のみを処理するみなし浄化槽(単独処理)が設置されていましたが、平成13年4月以降、新しく設置することはできなくなりました。
1 生活排水の汚れが1/10に減ります。
2 下水道処理水と同程度の処理能力(BOD20mg/以下)があります。
3 設置費用等に対する補助制度があります。
※補助金の申請方法等は、お住まいの市町村にお尋ねください。
4 建設コストが安く、一週間程度でどこにでも設置できます。
5 家庭で使用した水をその場で処理する「水循環」に貢献する恒久的汚水処理施設です。

構 造

浄化槽は、水中の微生物の働きを利用して汚水を浄化するもので、微生物が汚水の中の汚物を食べ、きれいな水になります。この微生物には大きく分けて、空気があるところで活動する好気性のものと、空気がないところで活動する嫌気性のものがいます。

浄化槽の処理は大きく分けて、一次処理(固液分離)で嫌気性の微生物が活躍し、二次処理(生物処理)では好気性の微生物が活躍し汚水を処理します。その後、消毒をし衛生上きれいな水にし放流します。

近年、浄化槽の構造は多様化してきており、従来の国で定められた仕様(告示型)だけではなく、生物処理の方法を工夫し、浄化槽の大きさを従来より小容量(約70%)にしたコンパクト型や水質規制の厳しい地域(閉鎖性水域)の富栄養化(※1) 等を考慮し窒素、リン、BOD(※2) 除去を高度に処理する高度処理型などがあります。

平成22年頃には、従来のコンパクト型浄化槽よりさらに有効容量の小さいモアコンパクト型浄化槽が開発され、単独処理浄化槽と同程度の設置スペースで合併処理浄化槽が設置できるようになりました。これらを活用した単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換が期待されています。

【※1】
リンや窒素等の栄養塩類の流入により、それらを取り込み成長する植物プランクトン等の生物の活性力が活発し、異常増殖を起し次第に水質汚濁が進行していくこと。

【※2】
水中の有機物が微生物の働きで分解されるときに消費される酸素の量で、有機性の汚れが大きければそれだけ酸素の要求量が多くなるので、BODの値は大きくなる。逆にきれいな水は、BODの値がそれだけ小さくなる。

■ 従来型(告示型)の構造

嫌気ろ床槽により固液分離(固形物を水と分離)し、接触ばっ気槽で好気性微生物により汚れを分解し、消毒後に放流するシンプルな構造です。
嫌気ろ床槽
汚水中の浮遊物を取り除くとともに、ろ材についた嫌気性微生物(酸素のないところで働く微生物)が汚水の中の有機物を分解します。
接触ばっ気槽
接触ばっ気槽内には接触材が充填されており、槽内をブロワから送りこまれた空気により、槽内が攪拌され、接触材の表面に付着する微生物により汚れを分解します。
沈殿槽
汚水を浄化した微生物などの固まりは底部に沈降し、きれいな上澄みを消毒槽へ送ります。
消毒槽
塩素消毒し衛生的に安全な水とし放流します。

■ コンパクト型合併処理浄化槽の構造

特徴として、ばっ気槽の生物処理に担体を用いて処理するため、従来型より、ばっ気槽を小容量にでき、槽全体が70%程度の大きさになります。近年、従来型より設置基数が増えてきています。
 夾雑物除去槽又は嫌気ろ床槽により固液分離(固形物を水と分離)し、生物ろ過槽内にある担体に付着した微生物により汚れを分解し、消毒後に放流する構造です。
夾雑物除去槽又は嫌気ろ床槽
汚水中の浮遊物を取り除くとともに、ろ材についた嫌気性微生物(酸素のないところで働く微生物)が汚水の中の有機物を分解します。
生物ろ過槽
主に、好気部とろ過部に分かれています。
【好気部】
ブロワから送り込まれる空気により、好気部内の担体が流動し、担体に付着した好気性微生物(酸素 を必要とする微生物)が働き汚れを分解します。
【ろ過部】
担体が充填されており、浮遊物質をろ過するとともに、担体に付着した微生物により汚れを分解しま す。
※1日に1回程度ろ過部の汚れを剥がすための逆洗が、ブロワ内のタイマーの設定により行われます。
処理水槽
生物ろ過槽の水を一時的に貯留し消毒槽に移流させます。
消毒槽
塩素消毒し衛生的に安全な水とし放流します。

■ 高度処理型合併処理浄化槽の構造(1)

高度処理浄化槽とは、窒素、リン、BODを高度に処理できる浄化槽で、閉鎖性水域における富栄養化防止に効果的です。


流量調整機能を有する嫌気ろ床槽により固液分離(固形物を水と分離)し、生物ろ過槽内にある担体に付着した微生物により汚れを分解します。また、生物処理槽内にあるリン除去装置により、リンの除去を行い、消毒後に放流する構造です。

流量調整型・嫌気ろ床槽
流量調整機能により流入水の流量変動を緩和し、生物ろ過槽へ汚水を移送します。
また、汚水中の浮遊物を取り除くとともに、ろ材についた嫌気性微生物(酸素のないところで働く微生物)が汚水の中の有機物を分解します。
生物ろ過槽
主に、好気部とろ過部に分かれています。
 【好気部】
 ブロワから送り込まれる空気により、好気部内の担体が流動し、担体に付着した好気性微生物(酸素を必要とする微生物)が働き汚れを分解します。
 【ろ過部】
 担体が充填されており、浮遊物質をろ過するとともに、担体に付着した微生物により汚れを分解します。
 ※1日に1回程度ろ過部の汚れを剥がすための逆洗が、ブロワ内のタイマーの設定により行われます。

【リン除去装置】
水に浸透した2枚の鉄板間に直接電流を流すことにより、陽極よりFe2+が溶け出し、Fe2+が溶存酸 素でFe3+に酸化される。Fe3+がPo43-と反応して不溶性のFePO4になる。
FePO4は生物ろ過槽のろ過部で捕捉し、逆洗時に汚泥として嫌気ろ床槽へ移送される。

■ 高度処理型合併処理浄化槽の構造(2)

高度処理浄化槽とは、窒素、リン、BODを高度に処理できる浄化槽で、閉鎖性水域における富栄養化防止に効果的です。


膜処理は、汚水を微細なたくさんの孔の開いた膜を通すことで、きれいな水にします。膜に開いている孔の大きさは0.4μm(0.1μm =1mmの1万分の1)と小さく、孔より大きな汚れは膜を通らないため、大腸菌程度の大きさのものは、膜をほぼ通さず除菌性の高い清澄な処理水が得られます。
また、従来型、コンパクト型と違い沈殿槽または処理水槽が必要ないため、槽全体を極端にコンパクトに出来ます。

夾雑物除去槽
異物を取り除いて膜の保護をします。また大きな固形物を分離します。
脱窒素槽
流入水を一時的に貯留してピーク流入に対応するとともに、微生物の働きで窒素を除去します。
汚泥濃度貯留槽
微生物の量を適正な範囲に調整し、微生物の活性を高く維持します。
硝化槽
有機物の働きで有機物を分解し、膜ユニットで固形物を取り除きます。
ポンプ槽・消毒槽
ろ過した処理水を消毒して放流します。

■ モアコンパクト型(沈殿分離・嫌気ろ床・好気循環方式)

コンパクト型浄化槽よりさらに有効容量の小さい浄化槽です。
これまでの二次処理装置の容量の削減に加えて、一次処理装置の容量を削減することにより、浄化槽全体が小容量化されています。
沈殿分離槽又は嫌気ろ床槽により固液分離(固形物を水と分離)し、好気ろ床槽内にある接触材又は担体に付着した微生物により汚れを分解し、消毒後に放流する構造です。

沈殿分離槽(沈殿分離部)
流入水に含まれる固形物を分離し、分離後の上澄水を嫌気ろ床槽へ移送します。
沈殿分離した汚泥は汚泥貯留部へ移送します。
沈殿分離槽(汚泥貯留部)
分離された汚泥をばっ気による好気条件下で貯留します。
嫌気ろ床槽
ろ材が充填してあり、固形物の除去、有機物の分解、硝酸・亜硝酸の脱窒を行います。
好気ろ床槽(接触ばっ気部)
接触材が充填してあり、有機物の分解、アンモニアの硝化を行います。
好気ろ床槽(生物ろ過部)
担体が充填してあり、SSの除去、有機物の分解、アンモニアの硝化を行います。
生物ろ過部で処理された水は、接触ばっ気部に移流し、繰り返し好気処理を行います。
処理水槽
生物ろ過槽の水を一時的に貯留し消毒槽へ移流させます。
消毒槽
塩素消毒し衛生的に安全な水とし放流します。

使用上の注意

浄化槽は、微生物の働きを利用して汚水を処理する装置ですから、微生物が活動しやすい環境を保つことが大切です。専門の業者に保守点検を委託していても、日頃の使い方が重要となります。
1
便器の掃除には、微生物に影響するような塩素等の薬剤を流さないでください。

2
トイレにトイレットペーパー以外の異物を流さないでください。

3
ブロワーの電源は切らないで下さい。

4
台所から、野菜くずや天ぷら油などは流さないで下さい。

5
マンホールの上に物を置かないで下さい。

 

取扱ルール

浄化槽が本来の機能を発揮するためには、ルールに従った取扱いが必要です。そのルールを定めた法律が「浄化槽法」(昭和60年10月1日施行)です。取扱いルールのポイントは次のとおりです。

■ 設置の申請・届出

家を新築する場合 建築主事へ「建築確認申請書」を提出しなければなりません。
便所を改造する場合等 保健所へ「設置届出書」を提出しなければなりません。

いずれの場合も、(公社)愛媛県浄化槽協会 で事前指導を行います。

  • 浄化槽の設置
    当協会に登録された製造販売業者が販売します。愛媛県知事に届出又は登録された工事業者が行います。
  • 使用開始報告
    使用開始後、30日以内に「使用開始報告書」を当協会を通じて保健所へ提出しなければなりません。
  • 保守点検
    愛媛県知事又は松山市長に登録された保守点検業者に委託して下さい。
  • 設置後の検査(第7条)
    使用開始後3か月を経過した日から5か月の間に設置状況等の検査を、(公社)愛媛県浄化槽協会が行います。
  • 清掃
    市町村長の許可を受けた清掃業者に委託して下さい。
  • 定期検査(第11条)
    毎年1回、定期的に維持管理状況等の検査を、(公社)愛媛県浄化槽協会 が行います。 ※製造販売・工事・保守点検・清掃の各業者に依頼される場合は、(公社)愛媛県浄化槽協会 会員であることをご確認下さい。

浄化槽の設置手続

(公社)愛媛県浄化槽協会 では、「愛媛県浄化槽取扱指導要綱」に基づき、浄化槽の設置計画・届出書の事前指導を行っております。

■ 建築基準法第6条の1に基づく建築確認申請に浄化槽設置計画書を添付する場合

■ 浄化槽法第5条1項(届出)による場合

管理者の義務

浄化槽は、微生物の働きによって汚水を処理する施設で日頃の維持管理が大切です。

■ 保守点検

保守点検は、浄化槽内の各種装置が適正に機能しているかの点検、装置や機械の調整・修理、消毒剤の補充などを行います。 これらの作業は、専門的知識・技術等が必要ですので、愛媛県知事又は、松山市長に登録された保守点検業者に委託してください。

■ 清掃

清掃は、浄化槽内にたまったスカムや汚泥などを引き出すとともに、汚泥の調整や装置の洗浄を行います。市町村の許可を受けた清掃業者に委託して下さい。通常、1年に1回(型式によっては、おおむね6か月に1回)は必要です。

■ 法定検査

浄化槽が適正に設置されているか、適正に維持管理・使用されているか、放流水は基準値以下となっているかなどを確認するのが法定検査です。
法定検査には、使用開始後3か月を経過した日から5か月の間に行う7条検査と、その後毎年1回定期的に行う11条検査があります。
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